UIガイドラインから学ぶライティングの基礎

Yasuhisa Hasegawa
6 min readMay 19, 2016

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2 年前に発表されて以来、細かな更新が続いている Material Design。最近、UI の動きに関するガイドが大幅に改変されたことで、感覚的なところも共有しやすくなってきました。Android アプリにおける UI デザインの基礎を固める上で、Material Design は非常に参考になりますが、このガイドラインは見た目のことばかり書かれているわけではありません。

Material Design の中には「Writing」と呼ばれる言葉遣いに関する項目があります。ボタンのような操作 UI のラベルはもちろん、エラーメッセージや、挨拶文など、アプリに表示されるテキストすべてに関してガイドラインが制定されています。言葉は大事なインターフェイスですから、きちんと項目をつくって紹介してあるのは素晴らしいことです。

以下、「Writing」項目で紹介されているガイドラインの意訳と私見の解説。項目が多く、英語に特化したものもあるので、気になるポイントをピックアップしました。

「You あなた」「My わたし」とは誰なのか明確にする

「あなたのマイアカウント…」のような表現をたまに見かけますが、あなたと私をどう捉えるのかを明確にしないと混乱を招く例ですね。日本語は一・二人称を使わないで対話ができるので別のチャレンジもありそう。

企業側・配信側視点の表現は避ける 原文では「We」を避けると書かれていますが、つまり作り手がどうしてほしいのか、何を言いたいかではなく、人がどう使って、何が達成できるのかを表記するとのこと。

簡潔に表現する

Web ライティングにも通じる基本。スキミングができるようにヘッダーやリストなどをつくって調整することは、アプリ上のライティングでも同じ。

専門用語は避け、多くの人が理解できる言葉をつかう

IT 用語はもちろんですが、サービス特有の名称も使用に注意が必要です。注意し過ぎることで説明が余計増えることもありますね。

言葉の使い方は統一する

取り消しなのか、キャンセルなのか … など、ちょっとしたところが統一されていないことがあるので用語集を作っておくと編集がしやすくなります。

謙遜になる

大げさな表現や、制作側の気持ちを込めすぎないのは重要な視点。基本こうあるべきだけど、アプリやサービスの性質によっては破ったほうが良さそう。

国に特化したメタファや表現は避ける

『当たり前』と思っている感覚や表現が、他の国では全然響かないというおkとがあります。海外のアプリストアもチェックして、いろいろ見るだけでも注視する目を養うことができます。

iOS でも言葉は大事なインターフェイス

Material Design のような事例と一緒に紹介された文書ではありませんが、iOS ヒューマンイターフェイスガイドラインにも「用語、言葉遣い」という似たようなガイドラインがあります。以下は文書からの抜粋と私見の解説(英文とも比較して意訳してあります)。

人が理解できる言葉をつかう

専門用語や業界語はなるべく避けるべきという基本中の基本ではあるけど、「当たり前だよね」と思っていることも多々あるので注意が必要ですね。

親しみやすい言葉遣いで、しかし過度になれなれしくはしない 親しみと距離感はアプリによってそれぞれなので難しいところ。アメリカ西海岸風の言葉遣いが日本で合うか分からないですが、サービスの性格を出す重要なところなので適切な距離を保ちたい。場合によって国によって変わることもありそう。

編集者になったつもりで、冗長、不要な言葉がないか確認する

誤字・脱字は何度チェックしても抜け落ちていることがあるので苦労します。書いた人以外がチェックすることが最も効果的でしょう。

操作 UI には短いラベルやよく見かけるアイコンを用いる

説明的なラベルを避けたいですが、次のアクションを促すような表記にしなければ、それがボタンにも見えないという iOS 的フラットデザインの課題。iOS も Material Icons のようにアイコンをあらかじめ用意してくれると助かります。

日付の表示は文脈や目的に合うように調整する

日付だけではないですが、画面ひとつひとつデザインするのではなく、人がどのように画面と接するのかというフローで考えると気づきやすくなります。

アプリだけでなく、ストアでのライティングの注意点も書かれています。UI デザインの基礎という文書のなかにストアに関するガイドを入れるのは疑問ですが、忘れてはならない項目です。

  • 文法や表記に誤りがないかチェックする
  • 大文字ばかりの言葉を避けるなどトーンに気を使う
  • 必要に応じてバグ修正の説明をきちんと行う

第二点目のように英語に特化した項目が含まれているので、日本のストアにも合うようなガイドも追加してほしいですね(大文字ばかりの文章は強調のため使うことがあるものの、場合によっては叫んでいるように見えてしまうため)。

まとめ

読み書きの能力に大きな差がある米国では、なるべる言葉を削ぐ傾向があります。一方、絵のように文字をスキミングができる日本語(中国語もそうですね)では、たくさんの文字を短時間で読解することができます。それに甘えて、どうしても説明し過ぎてしまうことがありますが、Material Design でも iOS でも書かれている「簡潔にする」という項目は重く受け止めておきたいところです。1, 2 文字でたくさんの情報を凝縮できる日本語だからこそ、よりシンプルに伝えることを考えるべきでしょう。

見た目や操作感はプラットフォームそれぞれの作法があるので、ガイドラインに従って組み立てていきたいですが、言葉に関しては共通点がたくさんあります。ライティングは別物と感じてる方もいるかもしれませんが、こうして UI デザインの一部として言葉のガイドラインがあるのは好感がもてます。コンテンツを第一に考えたデザインが求められているなか、UI に割けることができるスペースはわずかです。使う人を主役にしながら、その人の体験を補助する言葉は何でしょうか。ビジュアルデザインと同じくらい面白い課題です。

この記事は、筆者 Web サイトで公開したオリジナル記事からの転載です。

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Yasuhisa Hasegawa

He designs content for web and elsewhere. A Freelance designer living in Tokyo.