最近のデザイン話で足りなくなっていること

Yasuhisa Hasegawa
5 min readJul 14, 2016

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最近、仕事で人と話すときに「直観でどう思う?」ということを聞くようにしているんですよ。データに基づいて論理的に発言することはデザイナーのスキルとしてもつべきですが、すべての状況でそうある必要はないわけです。何事も証明しなければならないという環境になると、自由なアイデアが生まれなくなりますし、自然に『普通』『無難』なものになっていきます。

ビジネス重視という雰囲気が直観を根絶やしにしていることもあってですね。そうした雰囲気を崩すために「直観でどう思う?」と聞くわけですよ。あと、経験積んだデザイナーだったら、その直観って結構合っていることが多くて、わざわざ資料作るより早く進んだりするわけです。「まずやってみない?」みたいな勢いは時には必要ですし、そこから学べることのほうがむしろ多いわけです。時には決定フローとやらに沈められることもありますが … まぁそれはまた別の話か。

で、この雰囲気というやつが曲者でして、「おいらは客観的に考えます」とか言い張る人でも、しっかり雰囲気に飲まれていることがあるわけです。頭では「今はアイデアを自由に発散する時間だ」と分かっていても、仕事現場で「数字」「数字」という雰囲気が漂っていると、どことなく、なんとなく流されてしまうわけです。手を上げたいけど、浮くのが嫌だから手が上がらない静かな教室みたいな。こうしたことって仕事現場だけでなく、業界という少し広い場でもありえるお話ですよね。

こう書くと数字がダメのように聞こえてしますね。

数字について話すことが問題ではなく、数字が良くも悪くも短期的な目標達成のためだけに用いられることが雰囲気に影響していると書いたほうが良いかもしれません。来月、もしくは来週に成果を出したいという状況は、どの現場でもあることです。そして当然それは必要なことですが、それによって「早く作る」「手軽に作る」「無難に作る」という考えに行きやすくなる危険性があるわけです。短期的な視野だけだと、リスクをとった新しいアイデアは生まれにくくなりますし、デザインという行為がいつの間にか単なる作業になることがあります。

それはそうですよね。すぐ結果出したいなら、定番なもの作ったほうが良いですし、数打ち当たるという考えになりがちです。もちろん、どのような状況でも新しいアイデアをガンガン出して結果を残す人はいますが、ここで言っているのは先に話した「雰囲気」。飲まれちゃうわけですよ。弱いなぁと思いつつもそうなっちゃうわけです。

この先考えていきたいことは、私たちデザイナーがあまりにも短期的な視野での結果にコミットし過ぎることで、中長期的、つまり投資としてのデザインをする機会を失う可能性があることです。せっかくビジネスにもコミットしていきましょうという声が高まっているのに、そのコミットの仕方が「3ヶ月で成果出しましょう」だけで良いのでしょうか。

新しいテクノロジーを徹底的に活用した UI は何? タッチに最適化されているのではなく、タッチのためにあるデザインってどんなの?数年後のアプリと人との関係ってどうなっているの? Web はこのまま『融ける』存在になるの?こんなの正解も何もない単なる仮説 … いや、夢と言っても良いですよね。短期的な目標を達成するための努力だけでなく、少し先の未来を描いてみて可能性を模索することは、本来デザインの仕事にはあるような気がしてですね。

それがない、と言うより見えにくいと表現したほうが正しいかもしれません。デザイン系のサイトの多くは、短期的なものを扱った情報ですし、むしろ中長期に関わること、抽象的なこと、グレーな部分が好まれていないように見えます。そもそもそデザインなんてグレーなものだと思ってるのですが、それすら目を向ける時間がないほど、余裕のないような気がしてですね。そんな雰囲気だと、余計考えることなんてできないとかありそう。

見えていないものを形にしてみるという行為はデザインに必要だと思っていて、それが想像の世界であったとしても、その模索が短期的に成果を上げなければいけない仕事にも良い影響を与えるはず。今ある(社会やビジネスの)枠組みに沿った物作りだけでなく、そこから一歩引いて「そもそもどうなのよ」という疑問を投げかけた上でのデザインの話もあると思うわけです。それは今日も明日も明後日も日本のどこかでされているでしょうけど、「そうだよね」と思える雰囲気が味わいたいわけです。

ビジネスだ、チームワークだというお話がデザインの文脈でもあるのは興味深い動きですが、今を作り続けながらも、未来について大いに語り合うことも同時にあって欲しいですよね。最適化の先にあるものは機械化・自動化だったりして、そこに向かって全力に突っ走っているだけというのはどうかと思うわけです。

ひとりのデザイナーとして今後何が語れるのか。何ができるのかをボヤりと考えていたら、こんな文章になってしまいました。

おしまい。

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Yasuhisa Hasegawa

He designs content for web and elsewhere. A Freelance designer living in Tokyo.